何も共有していない者たちの共同体
アルフォンソ・リンギス
何も共有していない者たちの共同体
野谷啓二 訳/堀田義太郎・田崎英明 解説
発行元 : 洛北出版
四六判 ・ 上製 ・ 288頁
2006年2月発行
ISBN 4-903127-02-8
本体価格 2,600円
すべての「クズ共」のために

どこから来たかではない
なにができるかでもない

私たちと何も共有するもののない――
人種的つながりも、言語も、宗教も、経済的な利害関係もない――何も共有していない者たちの共同体画像
人びとの死が、私たちと関係しているのではないか?

何かが一人の官能の共犯者から
別の共犯者へと伝わる。
何かが理解されたのである。
共犯者の間で使われるパスワードが
認識されたのだ。
あなたを同じ仲間の
一人の共犯者に仕立てる何かが
語られたのだ。
ケツァール鳥、野蛮人、原住民、
ゲリラ、遊牧民、モンゴル人、アステカ人、
スフィンクスの。
『何も共有していない者たちの共同体』





『何も共有していない者たちの共同体』
本書の目次

もう一つ別の共同体……
侵入者……
顔、偶像、フェティッシュ
世界のざわめき
対面する根源的なもの
腐肉の身体・腐肉の発話
死の共同体

原註
解説1[田崎英明]
解説2[堀田義太郎]
訳者あとがき[野谷啓二]

Alphonso Lingis, The Community of Those Who Have Nothing in Common, Indiana University Press, 1994
『何も共有していない者たちの共同体』
それぞれの章の内容

「侵入者」では、他者性――私たちと対面するときに、私たちに訴えかけ、私たちに異議を申し立ててくるもの――の輪郭を描いている。
「顔、偶像、フェティッシュ」では、真の価値はなぜ、私たちが共有しているものではなくて、個々人を個別化し、彼または彼女を互いに他者にするものの方にあるのかを説明する。何も共有していない者たちの共同体画像
「世界のざわめき」が示そうとしているのは、言語とはたんに、私たちの経験を同等で交換可能なものとして扱えるように平準化する、人間の約束によって制定された一つのコードではなく、むしろ、自然のざわめき――動物の、最終的には、存在し反響するすべての物のざわめき――から生じるものと考えられるべきだ、ということである。言語というコードを鳴り響かせるとき、私たちは、人間の解読者とだけではなく、自然界が奏でる歌、不平、雑音とも意思を疎通させているのである。
「対面する根源的なもの」では、語られる内容よりも、私がその場に存在して語ることの方が本質的となるような状況を検討する。
「腐肉の身体・腐肉の発話」は、ある特殊な言語状況で生まれる拷問を扱っている。その犠牲者は、彼または彼女が語り、信じたことのすべてが嘘であり、自分は真実を語ることができないと無理矢理に自白させられてしまう。
最後に、「死の共同体」は、人が死にゆく人と形づくる共同体を考察している。
翻訳者紹介

野谷 啓二 (のたに・けいじ) NOTANI Keiji

1956 年生。上智大学大学院文学研究科前期課程修了。博士(文学)。現在,神戸大学国際文化学部教授。専門は英文学,宗教文化論,多文化共生論。著書に,『J.H.ニューマンの現代性を探る』(共著,南窓社,2005年),『ポッサムに贈る13のトリビュート――T.S.エリオット論集』(共編著,英潮社,2004年)などがある。訳書にノーマン・タナー『教会会議の歴史――ニカイア会議から第2バチカン公会議まで』(教文館,2003年),ノーマン・サイクス『イングランド文化と宗教伝統』(開文社,2000年)など。
解説者紹介

堀田義太郎 (ほった・よしたろう) HOTTA Yoshitaro

1974年生。大阪大学大学院医学系研究科博士課程。倫理学,生命・医療倫理,障害学。論文に,「生命をめぐる政治と生命倫理学――出生前診断と選択的中絶を手がかりに」(『医療・生命と倫理・社会』第2号,2003年),「障害の政治経済学が提起する問題」(『医学哲学医学倫理』第22号,2004年),「国民国家の没落と政治の再開」(『情況』第3期第5巻第9号,2004年10月号),「遺伝子介入とインクルージョンの問い」(『障害学研究 1』,2005年)など。

田崎 英明 (たざき・ひであき) TAZAKI Hideaki

1960年生。専門はセクシュアリティと「政治的なるもの」の理論。
著書に『ジェンダー/セクシュアリティ』(岩波書店,2000年),『売る身体/買う身体:セックスワーク論の射程』(編著,青弓社,1997年),『歴史とは何か』(共著,河出書房新社,1998年)などがある。論文に「無能な者たちの共同体」(『未来』,未來社)など。
関連書

アルフォンソ・リンギス『異邦の身体』〔松本潤一郎・笹田恭史・杉本隆久 訳、河出書房新社、2005年〕
アルフォンソ・リンギス『信頼』〔岩本正恵 訳、青土社、2006年〕
森巣 博『無境界家族』〔集英社文庫、2002〕
メルロ=ポンティ『見えるものと見えないもの』〔滝浦静雄・木田 元 訳、1989年〕
エマニュエル・レヴィナス『全体性と無限』〔熊野純彦 訳、岩波文庫(上・下巻)2006年〕
ジャン=リュック・ナンシー『複数にして単数の存在』〔加藤恵介訳、松籟社、2005年〕
書評

◆ 「東京新聞」2006年2月26日朝刊 平井玄氏による書評
◆ 「西日本新聞」2006年3月12日朝刊 平井玄氏による同書評
◆ 「週刊 読書人」2006年3月24日号 長原豊氏による書評
◆ 「図書新聞」2006年4月8日号 加藤恵介氏による書評
◆ 「書 標」2006年3月号 書評掲載
◆ 「読売新聞」2006年4月30日朝刊 林道郎氏による書評