何も共有していない者たちの共同体
浅野俊哉
スピノザ 共同性のポリティクス
発行元 : 洛北出版
四六判 ・ 上製 ・ 302頁
2006年3月発行
ISBN 4-903127-03-6
本体価格 2,600円
その政治的/倫理的思考の
革新性はどこにあるのか?
ドゥルーズ,ネグリの思想を踏まえ
〈群集―多数性〉による民主主義の基底をなす
〈喜び〉にもとづく集団的組織化の地平を示す

〈市民〉でもモラルでも
契約でもなく……

スピノザの倫理的な定式はただ一つ。「汝の活動力を増大させるように行動せよ」
すなわち「汝の〈喜び〉を最大限に味わうように行動せよ」。これだけである。
国家も共同体も法も制度もすべて、活動力の増大という生命活動のあとから要請されたものであり、その逆ではない。
『スピノザ 共同性のポリティクス』





『スピノザ 共同性のポリティクス』
目次

はじめに──〈喜び〉と共同性

〈現代性〉
スピノザ・ルネサンスが意味するもの
スピノザの復権/意識と思考/価値の転換/〈悲しみ〉との闘い/共通概念と〈社会〉

〈倫理〉
〈善悪の彼岸〉を超えて
ニーチェにおける〈善悪の彼岸〉/スピノザにおける善と悪の問題/集団的身体と力の構成主義

〈理性〉
合理主義のメタモルフォーズ
理性と共通概念/運動および静止/諸身体の共通性/能動性と理性/活動力と喜び/欲望としての理性/〈絶対的合理主義〉の逆説

〈組織化〉
集団的協同の理論
スピノザの実体概念とヘーゲルの誤解/様態の存在論的前提/「活動力」概念の重要性/自然権と集団的協同

〈強度〉
〈成熟〉の主題
スピノザと〈子どもになる〉こと/「無力な隷属者」としての子ども/理性は意志ではない、あるいは十全な観念/共通概念と「ヴィヴィッド」なもの/喜びと悲しみ、そして理性/力を持続させること、あるいは内在する理性/スピノザと〈大人になる〉こと

〈環境〉
〈自然〉の脱構築
ディープ・エコロジー派のスピノザ解釈/脱構築された〈自然〉概念と『エチカ』/スピノザの自然概念と〈人間の終焉〉論

〈民主主義〉
国家論の異例性
国家と理念の分離/スピノザの政治論における権力と国家の発生/政治と倫理の分離の帰結

〈抵抗〉
『〈帝国〉』の行方
〈帝国〉の定義と〈群衆―多数性〉/『〈帝国〉』におけるスピノザ/〈帝国〉とスピノザ/〈帝国〉の彼方

〈マルチチュード〉
〈群衆―多数性〉の危機と倫理性
ネグリの立場/ハートの立場/スピノザにおけるピエタスと愛/問いを開いたままで


後記
文献一覧
『スピノザ 共同性のポリティクス』
著者紹介

浅野 俊哉 [あさの・としや] ASANO Toshiya

1962年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。筑波大学大学院哲学・思想研究科博士課程単位取得満期退学。現在、関東学院大学法学部教員。哲学・社会思想史。本書に収録した論文の他に、「理性と情動──スピノザ哲学における合理主義の一側面」「スピノザ主義の経験主義的解釈──ドゥルーズ『スピノザ実践の哲学』をめぐって」など。翻訳に、マイケル・ハート『ドゥルーズの哲学』(法政大学出版局、共訳)など。
関連書

ジル・ドゥルーズ『スピノザ――実践の哲学』〔鈴木雅大 訳、平凡社ライブラリー、2005年〕
アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート『 <帝国> 』〔水嶋一憲・酒井隆史・浜 邦彦・吉田俊実 訳、以文社、2003年〕
『現代思想 総特集 スピノザ』〔1996年・11月臨時増刊号、青土社〕
『談』〔「特集 情動回路」2006年・第76号、たばこ総合研究センター〕


浅野俊哉「〈良心〉の不在と遍在化──スピノザにおける morsus conscientiae の行方」〔『思想』2007年6月号、岩波書店〕

◆目次
〈良心〉の不在と遍在化
──スピノザにおける morsus conscientiae の行方

1 良心の現在とニーチェの洞察
2 スピノザにおける良心の位置
3 様々な良心論の特徴
4 スピノザの「良心」論・再考
5 悲しみと共同性

◆著者による、この論考についての紹介文
 今回の論文は、拙著の「補論」であると同時に、ある側面ではそれを、ほんの僅かばかり踏み出すものになっているのではなかろうかと、自分では感じています。
というのもこの論文は、あの本の問題意識の延長上に確かに位置づけられるものであるとはいえ、「テーマ横断的な視点」(今回は〈良心〉)を採用して、スピノザの思想と他の思想家の考えを対峙させるという比較思想的分析を、不十分ながらも企てているからです。
今後は、スピノザのテキスト内部に閉じた探究ではなく、現代人がラディカルに問い直す必要のある政治的諸テーマ(たとえば「自由」や「民主主義」、「国家」や「法」といった)について、「異端の思想家」であるスピノザがどういうヒントを与えてくれているかをめぐって、今まで以上に思想史的な観点を踏まえつつ解明することを試み、私たちが自明視している認識上の枠組みに一石を投じていくことが、いくつかある仕事の一部になっていくような予感がしています。

本書の中身

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書評

◆ 「週刊 読書人」2006年5月26日号 小泉義之氏による書評
◆ 「読売新聞」2006年6月18日号 林道郎氏による書評
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