『排除型社会 ―― 後期近代における犯罪・雇用・差異』
ジョック・ヤング [著]
青木秀男・村澤真保呂・伊藤泰郎・岸政彦 [訳]
- 仕 様 四六判・並製・542頁
- 刊行日 2007年2月末発行
- 発 行 洛北出版
- ISBN 9784903127040
- 定 価(本体価格 2,800円+税)
この社会にあわせて生きていくしかい……と諦めてはいけない――。
安定的で同質的な包摂型社会から、変動と分断を推し進める排除型社会への移行にともない、排除はつぎの3つの次元で進行した。
1 労働市場からの排除
2 人々のあいだの社会的排除
3 犯罪予防における排除的活動
かつての包摂型の社会を懐かしんでも気休めにもならない。取り組まなければならない課題は、新たな形態のコミュニティ、市場の気まぐれに左右されない雇用、八百長のない報酬配分――これらをどう実現するかである。
「画期的な書物。驚異的なまでの博識、事実への深い洞察、明晰な論旨と論証が結びついたこの著作に、私は圧倒された。」――ジグムント・バウマン
目 次
序 文
第1章 包摂型社会から排除型社会へ
狂ったコンパス
近代主義のパラダイム――たったひとつの世界
包摂型社会から排除型社会へ
多元主義と存在論的な不安
犯罪の二項関係
増加する犯罪と社会的排除
排除の暗黒世界が到来する?
排除の行方
アメリカン・ドリームとヨーロピアン・ドリーム
スケープゴートの機能
結 論――ゲントからの報せ
第2章 後期近代における犯罪と不協和音
近代の危機
基本に帰れ
近代主義への挑戦
後期近代への移行――犯罪と犯罪統制の概念の変化
相対的剥奪感と個人主義
ノスタルジーと衰退
犯罪と欠乏
第3章 カニバリズムと過食症
人間を飲み込む社会と吐き出す社会
社会統制のヴィジョン
寛容性の長期的な低下傾向?
近代主義の世界
包摂主義とその急進派
後期近代の変容
保険統計主義の出現
保険統計主義と「新刑罰学」
保険統計主義とリスク社会
よそ者とともに生きる――リスクを構成する六つの要素
環境世界とリスク・マネジメント
近代の理解しづらさとリスク批判
後期近代の進歩的な側面
社会的排除と市民
逸脱の原因としての包摂と排除
二つの実証主義の批判
包摂と排除――過食症としての後期近代
フィラデルフィア都心の事例
下位文化の概念
下位文化と多様性
金持ちは別の人間
フィラデルフィア再考
第4章 他者を本質化する「悪魔化」と怪物の創造
多文化主義的エポケー
文化的革命における存在論的な不安
存在論的な危機にたいする多文化主義的な解決
本質主義が人々を惹きつける理由
他者を本質化する
生物学的本質主義と文化的本質主義
本質主義の詭弁
他者の悪魔化を成功させる条件
悪魔化と怪物の創造
本質主義と戦争の犯罪学
本質主義と社会的排除
第5章 不寛容の犯罪学――ゼロ・トレランス政策とアメリカにおける刑務所拡大の試み
ウェストミンスターのセミナー――暴かれた奇跡
主張の誤りとカテゴリーの混同
「割れ窓」のリアリティ
モラル・パニックと特効薬――民衆の悪魔と無垢な聖女たち
犯罪を表面的に捉える誤りと社会を単純化して捉える誤り
後期近代への移行
寛容の限界
アメリカにおける刑務所拡大の試み
第6章 まとまりのある世界とバラバラの世界
正義の領域――能力主義の社会
左派と能力主義
正義は満たされるのか?――家族の役割
恣意的な規制
共同体の領域
正義と共同体
るつぼ/虹/モザイク
エリック・ホブズボームとアイデンティティ・ポリティクスの隆盛
第7章 カオスを放置する――軽く接しあう他人たちの秩序
リチャード・セネット、気乗りしない散策者
純化の過程
「ソフト・シティ」再考
理想化されたコミュニティ
同化されない他者たちに開かれた、抑圧のない都市
差異の多文化主義
他者に開かれて変容すること
強度の小さな差異
統合度の低い共同体と変容的多文化主義
再分配と認知、現状肯定的是正と現状変革的是正
正義の領域――能力主義の社会
共同体の領域――変容する他者
第8章 後期近代――矛盾に満ちた世界
後期近代の矛盾した特徴
暗黒世界に対抗する事例
後期近代の社会契約
註
訳者あとがき
文献一覧
索引(人名・事項)
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著者紹介
ジョック・ヤング Jock Young
1942年、スコットランドで生まれる。現在、ニューヨーク市立大学大学院センター教授、およびイギリスのケント大学社会学教授。犯罪学、社会学の研究者であり、犯罪問題を中心に社会的にも積極的な活動をおこなっている。
近著の『犯罪と処罰をめぐる新たなポリティクス』(The New Politics of Crime and Punishment)では、犯罪が落ち着いているにもかかわらず過剰な犯罪統制をおこなう、ニューレイバー(第三の道)による排除的な政策を、厳しく批判している。
訳者紹介(五十音順)
青木秀男(あおき・ひでお)
1943年生。都市社会学研究所所長。ホームレスなど都市下層の社会学的研究。著書『現代日本の都市下層――寄せ場と野宿者と外国人労働者』(明石書店、2000年)、編著『場所をあけろ!――寄せ場/ホームレスの社会学』(松籟社、1999年)、監訳書にウィリアム・ジュリアス・ウィルソン『アメリカのアンダークラス』(明石書店、1999年)、論文「どこ行けいうんや!――公園野宿者の占居と排除」(『日本都市社会学会年報』23号、2005年9月)など。
伊藤泰郎(いとう・たいろう)
1967年生。広島国際学院大学現代社会学部教員。都市社会学、エスニシティ研究。論文に「関東圏における新華僑のエスニック・ビジネス」(『日本都市社会学会年報』第13号、1996年)、「社会意識とパーソナルネットワーク」(森岡清志編『都市社会のパーソナルネットワーク』東京大学出版会、2000年)、「外国人の居住分布」(浅川達人・倉沢進編『新編東京都社会地図1975-90』東京大学出版会、2004年)など。
岸 政彦(きし・まさひこ)
1967年生。龍谷大学社会学部教員。文学博士。社会学、差別論、民族論、生活史方法論。共著に『社会文化理論ガイドブック』(ナカニシヤ出版、2005年)など。論文に「語り・差異・構造」(『人権問題研究』2004年No.4)、「戦後沖縄の労働力流出と経済的要因」(『都市文化研究』2004年No.3)、「始まりとしてのナラティブ/世俗批評としての生活史研究」(『関西大学人権問題研究室紀要』2005年No.51)など。
村澤真保呂(むらさわ・まほろ)
1968年生。龍谷大学社会学部社会学科教員。精神分析、社会思想。翻訳に『精神の管理社会をどう超えるか』(F.ガタリ他著、松籟社)、『グローバリゼーション・新自由主義批判事典』(I.ラモネ他著、作品社)など。論文に「ガブリエル・タルドとコミュニケーションとしての社会」(『京都大学総合人間学部紀要』第8巻、2001年)、「食のグローバル化と社会病理」(『龍谷大学国際社会文化研究所紀要』第7号、2005年)など。
書 評
◆ 「朝日新聞」2007年4月1日朝刊 高橋伸彰氏による書評
◆ 「東京新聞」2007年3月18日朝刊 読書面 古田隆彦氏による書評
◆ 「京都新聞」2007年3月18日朝刊 読書面 渋谷望氏による書評
◆ 「週刊 読書人」2007年4月13日号 樋口明彦氏による書評
◆ 「STUDIO VOICE」2007年5月号 北小路隆志氏による書評
◆ 「部落解放」2007年6月号 原口剛氏による書評
◆ 「図書新聞」2007年6月2日号 芹沢一也氏による書評
◆ 「論座」(朝日新聞社)2007年7月号 酒井隆史氏による書評
◆ 「Meets」(エルマガジン社)2007年8月号 永江朗氏による書評
◆ 「法学セミナー」(日本評論社)2007年8月号 宮川香織氏による書評
◆ 「週刊 読書人」〈2007年上半期の収穫 アンケート/印象に残った本〉、阿部潔氏によるコメント
◆ 「朝日新聞」2007年12月23日 読書面〈この一年の収穫を振り返る」、北田暁大氏によるコメント
装 幀
本文デザイン・組版・カバーデザインは、洛北出版編集による。
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