『生きられた障害――障害のある人が、妊娠、出生前検査、親や子どもについて、語ったこと』
二階堂祐子[著]
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発 行 洛北出版
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仕 様 四六判 並製 412頁
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刊行日 2022年9月刊行
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ISBN 978-4-903127-33-0 C0036
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定 価(本体価格 2,600円+税)
「親が出生前検査を受けていたら、この私は、生まれてこなかったのかもしれない?」
「障害」のある女性は、妊娠や出産、自分の親や、出生前検査について、何を思ってきたのだろうか。「障害」のある男性は、パートナーの妊娠や出産に何を思ったのだろうか。
また、「障害」のある彼ら彼女らは、胎児の「障害」や「疾病」を「知る」ための医療技術を使える社会について、どのように考えているのだろうか。
「障害に気づいた経験」、「障害があること」、「治ること」、「女性であること」などをめぐる、一人ひとりの語りに耳を澄ませ、共に考える。
「私の人生を勝手に決めつけないで!」
この本は、「障害」のある12名へのインタビュー調査にもとづき、「障害」をめぐる一人ひとりの経験をくわしく紹介し、検討し、考察している。
まず、第1章と第2章では、インタビューに応じてくれた人たちの、年齢、職業、パートナーの有無、「障害」の原因などを紹介する。
つぎの第3章では、彼ら彼女らが、自分の身体にかかわる経験を、どのように語っているかを見ていく。そのうえで第4章では、それぞれの幼少期の記憶に照明をあてる。
そして第5章では、「障害」のある彼ら彼女らが、出生前検査というものがあることを知ったさい、どのような「胎児」をイメージしたかを確認する。個人(私)の気持ちにおいて、「かつて胎児だった私」というイメージと、出生前検査で下された診断名から思い浮かぶイメージとは、同じなのだろうか? 違うとしたら、いかに切り分けられているのだろうか?
この問いをさらに延長して、第6章では、「障害」という言葉が、一人ひとりの語りの文脈で、どのように機能しているかを見ていく。
つぎの第7章では、「障害」のある自分自身が、生まれてくる子の母や父になるかもしれないという点について、彼ら彼女らの想いや考えを取り上げる。また、出産経験のある彼女らの気持ちや体験も見ていく。そのうえで、出生前検査の「適応」者と見なされることが、いったいどのような経験なのかを浮かび上がらせる。
そして第8章へとつなぐ補章では、1970年代に、自治体が出生前検査(羊水検査)を公費で実施しようとしたことに対して、脳性麻痺者の当事者団体「青い芝の会」神奈川県支部が行なった「胎児チェック反対運動」を振り返る。
最後の第8章では、これまでの章で紹介した彼ら彼女らの唯一無二の経験と、そして、1970年代の障害当事者運動から今日へ至る社会的な経験とを踏まえて、「障害」をめぐる経験について、さらに考察を掘り下げる。
なお、それぞれの章と章のあいだには、「障害」をめぐる8名の語りを一篇ずつ掲載している。彼ら彼女らがどのように語っているのか、文字から想像して耳を澄ませてくださればと願っている。
目 次
目次のテキストデータ
序 章 この本の内容と方法
第1章 どんな人たちに話を聞いたのか
調査方法
協力者の横顔――面会に至るまでの経緯
●エリの語り
第2章 出生前検査について、障害のある人から話を聞くこと
調査者について
調査者の立場
協力者の態度
「模範的」に応答する
どういう意図なのかと逆に問う
応答へのとまどいと苦笑
同一視から逃れる
●メグミの語り
第3章 自分の障害名を説明すること
障害名を説明する
医学による分類名としての「障害」
しんどくて、せつなくて、いらいらする
いるだけで大変
安心感をくれる
変わっていく
未知なもの
診断名の後ろにあるもの
●アサコの語り
第4章 「障害」を認識したとき
親から経験を伝え聞く
もっとも古い記憶に遡る〔さかのぼる〕
語られなかった身体の違い
●ケイコの語り
第5章 胎児をめぐるふたつの「障害」
出来事が線になる
検査対象であることを知る
検査対象だったかもしれない――自分の場合
検査対象だったかもしれない――パートナーの場合
未生〔みしょう〕の〈名としての障害〉
「一般論」との違い
類推〔るいすい〕への疑念
自己投影を禁欲する
興味がない
〈生きられた障害〉の文脈
●ヒロトの語り
第6章 「障害」という言葉
「障害」とインペアメント
〈生きられた障害〉と〈名としての障害〉
他者を抱え込む〈生きられた障害〉
出生前に見つかった〈名としての障害〉
●ヒサコの語り
第7章 「中絶」や「検査」を勧められた経験
産む/産まないを決める
妊娠するかもしれない身体
出生前検査を受ける/受けない
出生前検査の説明を受ける
〈私〉と胎児が否定される
●タクヤの語り
補 章 1970年代、青い芝の会による要求
第8章 2010年代の声、過去からの声
経験の軌跡〔きせき〕を遡行〔そこう〕する
ふたつの「障害」
1970年代から2010年代へ
「認めよ!」から「興味ない」へ
「当事者」とは誰か?
●トオルの語り
あとがき
文献一覧
付属資料1~4
索 引
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著 者
二階堂祐子 Nikaido Yuko
1976年生まれ。明治学院大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。現在、国立民族学博物館超域フィールド科学研究部外来研究員、奈良先端科学技術大学院大学男女共同参画室特命准教授、近畿大学非常勤講師。専門は医療社会学。
共著として、『出生前診断とわたしたち――「新型出生前診断」(NIPT)が問いかけるもの』(生活書院、2014年)。論文として、「遺伝情報に託される意味――遺伝性疾患のある当事者の語りから」(『科学技術社会論研究』17号、2019年)など。
装 幀
本文イラスト・組版・カバーデザイン、装画、いずれも洛北出版編集による。
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