『日常的抵抗への招待――後期新自由主義における子どもと教育』
桜井智恵子〔著〕
- 発 行 ┃ 洛北出版
- 仕 様 ┃ 四六判 上製 336頁
- 刊行日 ┃ 2026年3月20日(4月10日ころ発売予定)
- ISBN 978-4-903127385 C0036
- 定 価(本体価格 2,600円+税)
● 英語表記のタイトル
An Invitation to Everyday Resistance
――いま必要なのは、「しっかりがんばる」とは別のあり方である。
活躍、個別最適化、共助を「楽しむ」ようすすめる今日の社会は、「稼〔かせ〕げる」能力を日々バージョンアップするよう、個人にはたらきかけている。更新できなければ、自立支援や学習支援などのケアを受けるよう、データ化を通して、個人に迫る。
「私」は、この価値観を内面化し、他人にも押しつけはじめ、自責他害をさらに強めて、ケアの争奪戦に駆り立てられる。
今日の社会、すなわち後期新自由主義の体制は、第一に、経済成長期の命令型の訓練と管理から、個別最適に学習する自発的な自己調整へのバージョンアップを特徴とする。
第二に、このバージョンアップからはじかれる人々に対しては、市民や地域が国家に代わって支援する「ケア」への注目がある。
たとえば、組織や制度の内部に、はじかれた「ヤングケアラー」の「声を聞く」相談窓口が設置されたり、その業務がNPOに委託〔いたく〕されている。
もちろん、今まさに困っている子どもを支えなければならない状況は、あちこちにある。
けれども、困っている子どもを支援するという真摯〔しんし〕な姿勢は、ともすれば、どんな関わり方をすればよいのかという、方法やマナーの問題に手順化されがちでもある。
保護者も、教師やケアワーカーや研究者も、方法や関わり方に傾注するあまり、その子どもの問題を直接に間接に形づくる社会経済的な構造を問うあり方――日常的抵抗――から遠ざかってしまう。ケアや支援でなんとかしていくほうがてっとりばやい、という考え方が優勢になり、社会問題は個人化されていく――「あなたが、私が、しっかりがんばらなきゃ!」
しかも構造的な問題を問うても周囲から煙たがられるため、稼いで豊かになって困難や困窮を乗り越えるという思考パターンにいっそう染まっていく。稼げない日本になっても、あるいはなったからよけいに、この発想は強化される。
こうして、既存の社会構造はそのままに、ケアや支援は、現場の当事者たちによる関係性や手法で完結してしまうのである。
本書は、ケアや支援がいかに便利使いされ、そこに教育や福祉の業界はどのように加担し、加担させられているかについて、まずは歴史的に把握する。そのうえで、「稼げる個人」とは別のあり方と自由について、アナキズムや政治思想史の知見、各地で行なわれている実際の取り組みなどを紹介しながら、素描を試みる。
「〈われわれ〉を構築する後期新自由主義の力学は、全体性に吸い込む精神統治である。〔…〕能力や開発の賛美に従わない、という重要な日常的抵抗が、〈われわれ〉にはできる。」
――この本は、「稼げる個人」とは別の、存在の自由への招待状である。
● 目 次
序 章
第Ⅰ部 生政治としての支援
● 第1章 「支援」という包摂――自己責任への主体化
● 第2章 取り出される「ケア」――ヤングケアラーの構築
● 第3章 なぜケアが問題化されるのか――生政治としての支援の組織化
● 第4章 「自立した個人」という福祉国家の原理的課題――ワークフェア子ども版:学習支援を問う
● 第5章 後期新自由主義が誘う地域支援――「レイドロー報告」の現代的限界
第Ⅱ部 子ども・家庭という戦場
● 第6章 こども家庭庁の「こどもまんなか」政治――後期新自由主義における「ウェルビーイング」
● 第7章 戦後民主主義教育とこども家庭庁のつながり――結婚‐出産‐子育ての奇妙な結びつき
● 第8章 高度経済成長期初頭の家庭における学歴の高度化――学卒労働市場の継時的変化を手がかりに
第Ⅲ部 教育と市民社会の政治
● 第9章 子どもの「ニーズ解釈の政治」――学力向上とケアの完結体制
● 第10章 「子どもの権利」の使われ方――ベールをかける物語
● 第11章 インクルーシブ教育を考える重要な視点――国連主義を超えて
● 第12章 こども基本法の課題と学校――資本主義的差別をめぐって
第Ⅳ部 日常的抵抗への招待
● 第13章 別の生のあり方論序説――アナキズムなるものの「陣地戦」
● 第14章 声の統治と再生――現状を支える/支えない主体
終 章 〈われわれ〉への叛逆――全体性の力学と自由
文献一覧
あとがき
索 引(人名・事項)

● 著者紹介
桜井智恵子 Chieko SAKURAI
University of the Philippinesなどを経て、大阪市立大学大学院生活科学研究科博士課程満期退学。博士(学術)。関西学院大学人間福祉研究科教授。
専門は、教育社会学、社会思想史。
主な著書として
- 『市民社会の家庭教育』(信山社、2005年)
- 『子どもの声を社会へ――子どもオンブズの挑戦』(岩波新書、2012年)
- 『教育は社会をどう変えたのか――個人化をもたらすリベラリズムの暴力』(明石書店、2021年)
- 『ポンコツでいこう――反開発主義による社会の再生産』(いのちのことば社、2025年)
- 『希望への陰謀――時代の毒をどう抜き取るか』(浜矩子、山口二郎、川内博史、木村朗、竹信三恵子、金井利之、桜井智恵子、現代書館、2016年)
- 『戦争への終止符――未来のための日本の記憶』(グレン・フックとの共編、法律文化社、2016年)
- 『「民意」と政治的態度のつくられ方』(工藤宏司、桜井智恵子、広瀬義徳、柳沢文昭、水岡俊一、堅田香緒里著、太田出版、2020年)
- 『自立へ追い立てられる社会』(広瀬義徳、桜井啓太編、インパクト出版会、2020年)…など。
● 本文の見本(序章から各ページの見開き)
引用文および本文中の読みにくい漢字、および固有名詞にはすべて、読み仮名をつけております。本書が、こんにちの若い読者を含めた幅広い読者にむかえられるよう工夫いたしました。
また、視覚障害、読字障害、上肢障害などの理由で紙の書物をお読みになれない方には、本書のテキストデータを提供できます。本書末尾の見開き左側の「レモンのイラスト」が引換券になります。
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● 書 評
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